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ログカラキ

音楽や漫画が好きな週末ロードバイク(Cannondale)乗りのブログ。

口の中に虫が入った時のあの感覚が鮮明に蘇る小説

新装版が出ていたので手をつけるのに丁度良いタイミングだと思い購入した「限りなく透明に近いブルー」。実は村上龍作品は希望の国エクソダスしか読んだことが無かった。仮に「作家性」という言葉がその著者でよく使われる台詞回しや描写の癖を表すものだとした場合、この著作における村上龍の作家性はとても生々しく暴力的だと思った。この限りなく透明に近いブルーには明確なストーリーというものが無く、セックスやドラッグに陶酔している若者たちの姿を淡々と描かれている。登場人物も急に出てくるし、彼や彼女らがどういった人物なのかはほとんど語られない。地の文は人物の出自を全くと言っていいほど書かない。代わりに彼らが今どのような状態になっているのか、または彼らの居る場所にばかり焦点をあてている。残飯や洗い物の溜まった流し台や誰かが吐いている様、薬物を投与した直後の目つき、感覚がとにかく生々しくて、匂いまで伝わってきそうだった。割と前半の方にはそうした描写が多くてちょっと読むのがキツかった…。

一応主人公的な立場にいるリュウを中心に話は進んでいく。けれどもリュウが率先して皆をまとめて何かをするとかそうした事は一切無い。むしろ傍観者であることが多い。リュウの周りにいる人間が様々な事を引き起こしたり巻き込まれたりするのをリュウは見ている。もちろん動かなくては行けない時はちゃんと動くから決して受け身なだけの人間ではないのだろうけど。極めて読者に近い位置でこの世界を見ている人物かもしれないと思っている。

個人的には物語の最初の方でリュウが仲間の女の子を連れてドライブしながら、自分の頭の中にある国について話しているシーンが好きだ。ドライブしている時に周りの景色を眺めていると、それが自分の記憶と結びついて一つの国を生み出す。そこには誰でもいる。何でもある、とにかく色々なものが混ざり合っている国。滅茶苦茶なものの筈なのに、妙に頷ける情景だった。

次はコインロッカー・ベイビーズかな。

 

新装版 限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

新装版 限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)