ログカラキ

音楽や漫画が好きな週末ロードバイク(Cannondale)乗りのブログ。

竹宮ゆゆこ「知らない映画のサントラを聴く」

とらドラ!」は原作1巻しか読んでないし「ゴールデンタイム」はアニメを少し観ただけなんですが表紙に惹かれて買ってしまいました。とらドラ!はアニメ全話観ましたよ。詳しい感想は後述しますが夏場に読むのにうってつけな青春小説です。

※ちょっとネタバレありますのでご注意下さい。
 
 

あらすじ

 主人公は錦戸枇杷・23歳女子そして無職。実家暮らしで昼間は家事のしつつ、就職活動を(している事に)している。家事をしているのは働いている家族に申し訳が立たない、というよりそこで何もしなかったら家にいさせてもらえないのでは無いかという思いが強いから。そして真夏でも自分1人の為にエアコンをつけるのは電気代が勿体無いという理由でどんなに暑くても冷房もつけずに生活しています。ダルダルのシャツに薄汚れたジャージ姿、暑けりゃ下はパンツだけというあられもない姿で日々を無為に過ごす枇杷だらしない格好の女子最高ですね。しかし、そんな枇杷にはある日課があった。それは自分の大切なある物を盗んだ犯人を探し出すこと。その為に夜な夜な自転車に跨っては犯人探して走り回る日々。

 しかし、ある日枇杷に突然の宣告が親…ではなく兄嫁から告げられます。「両親と兄嫁夫婦が実家を2世帯住宅にするから出て行ってくれないか」と。そこに枇杷の部屋はありません。そして、その事を告げられた直後に半強制的に実家を追い出されてしまいます。行く宛も無く夜中の住宅街をとぼとぼ歩く枇杷。その時偶然にもあのコスプレ男と遭遇。もはや失うものは無いとばかりに全力でコスプレ男を追いかける枇杷。地の利を活かして何とか犯人を確保。大事なもの-1年前に亡くなった親友である清瀬朝野の証明写真-を取り戻すことに成功します。
 
  しかし、一番の衝撃はコスプレ男が朝野の元恋人の森田昴(すばる)であったこと。何やかんやありつつ、帰るところのない枇杷は成り行きで昴の家に居候することに。最初は昴の過剰なまでの優しさに戸惑う枇杷。遠慮しても「俺は強盗をしてしまったから」の一点張りで押し通される。やがて枇杷は、昴のそうした「罪滅ぼし」が果たして自分に向けられたものなのか疑問に思い始めて…。

感想

 とにかく読後の爽やかさが素晴らしい小説。物語後半、というか最後の舞台が海沿いの街になるというのもあるけど。物語前半にある、枇杷のどうしようもない毎日だったりそれまで蓄積されていたモヤモヤした部分が、後半で一気に吹き飛ぶ感じ。過去に折り合いをつけられず、行き場の無い感情を持ったまま生きる辛さが台詞や行動の所々に滲み出ています。まとわりつく熱気、滴る汗、躍動する主人公の描写も息遣いが聞こえてくるのではないかとというくらいリアル。
 確かにライトノベルのように砕けた文体も見受けられますが、決して軽すぎす鼻につくような事はありませんでした。少なくとも個人的には。
 仮にアニメとかでやるなら、とらドラ!やゴールデンタイムのように週間単位で放送するより映画化して1本にまとめた方が観やすいかもしれません。とっつきやすき、爽やかな気分になりたい人にお勧め出来ます。
 

 

知らない映画のサントラを聴く (新潮文庫)

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